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くま弁だより

熊弁の意見

割賦販売法の改正に関する意見書

熊本県弁護士会 会長  三藤省三

第1 意見の趣旨
 1 抗弁対抗の効果の拡大
信販会社に対する抗弁対抗の効果を,未払金の支払停止を超えて既払金の返還義務にまで拡大する。

 2 加盟店管理義務と違反時の民事的効果の法定 
   クレジット会社の加盟店管理義務を法定し,加盟店管理義務違反の場合につき,クレジット会社の請求権を制限し,既払金の返還義務等の損害賠償責任の民事的効果も明記する。

 3 過剰与信禁止義務と違反時の民事的効果の法定
   クレジット会社に実効的な過剰与信規制を行うとともに,過剰与信規制に違反したクレジット契約についてクレジット会社の請求権制限及び既払金の返還義務等の損害賠償責任の民事的効果も明記する。

 4 割賦要件・政令指定商品制・適用対象制限の撤廃
 割賦要件を撤廃し,1回払いや2回払いのクレジット契約も適用対象とする。
 政令で規制対象商品を制限することを撤廃する。
 適用対象を制限する支払総額規定・商行為除外規定・販売業者・従業員除外規定を削除する。


第2 意見の背景
   近年,クレジット取引が浸透し,多くの消費者がクレジット取引により消費活動を行っている。
   他方,大きく報道された高齢者を狙った不必要な住宅リフォーム工事や布団・呉服などの次々販売による消費者被害事件等が多発し,その消費者被害の多くがクレジットを利用した取引となっている。
   クレジット契約による消費者被害が多発する理由は,加盟店の悪質さは当然として,その悪質加盟店と提携したクレジット会社の法的責任が明示されていないからである。悪質商法を行おうとしている販売会社を加盟店にしない,悪質商法をしていると判明した時点で加盟店契約を解約する,悪質商法によるクレジット契約は例外なくクーリングオフできる,悪質商法によるクレジット契約締結の場合は販売会社と連帯して既払金を返還する義務をクレジット会社に課すなど,割賦販売法の全面的改正が必要である。


第3 意見の理由
 1 抗弁対抗の効果の拡大について
   現行割賦販売法は,第30条の4において,抗弁対抗の効果として,購入者の支払停止を規定している。
しかし,この規定のみでは,購入者が支払途中のどの段階で消費者被害に気づいたかによって購入者の救済範囲が異なることになり,不合理な結果となる。 
一方,クレジット会社は,加盟店管理義務を尽くしていれば悪質販売が発生することを未然に防止することができるので,抗弁対抗の効果が既払金返還に拡大したとしても,クレジット会社に過剰の負担を強いることにもならない。 
さらに,抗弁対抗の効果が既払金返還に拡大すれば,クレジット会社に加盟店管理義務を促す効果もある。
したがって,抗弁対抗の効果をクレジット会社への既払金返還にまで拡大すべきである。

 2 加盟店管理義務と違反時の民事的効果の法定について
   クレジット契約は,加盟店がクレジットによる販売契約を締結すればするほど,クレジット会社の売上が増大する構造になっている。 
現行法上,加盟店管理義務が必ずしも明示されていない。
このため,クレジット会社が,加盟店が問題のある販売等を行っていることを察知した場合,厳格な調査をせずに与信を続ければ,それだけ売上が続くことになる。さらに,加盟店契約を解約すべき問題行為に気づいたとしても,直ちに加盟店契約を解約するよりも(加盟店解約を解約すれば加盟店の経営は破綻する),加盟店を延命させて徐々に債権回収をするほうが有利であるため,加盟店を管理する動機付けも存在しない。
現に,加盟店管理義務については,様々な行政通達があるもののクレジットを利用した悪質販売が減少する兆しは全くない。
したがって,加盟店管理義務を法文上明示するとともに民事上の効果を付与することによって,その実効性を図るべきである。

 3 過剰与信禁止義務と違反時の民事的効果の法定について 
   割賦販売法38条は,割賦販売業者に対し,信用情報機関を利用する等し,購入者の支払能力を超える与信をしないよう努めなければならないという過剰与信を防止する規定を置いている。
しかし,この規定は,努力規定に過ぎない。
現実には,年金収入しかない高齢者に対して,クレジット取引を利用して,不必要なリフォーム工事や布団・呉服を次々と販売する事件が続発している。
努力規定のみでは不十分であることが明らかである。
したがって,過剰与信禁止義務を法文上明示するとともに民事上の効果を付与することによって,その実効性を図るべきである。

4 割賦要件・政令指定商品制・適用対象制限の撤廃について
割賦要件の撤廃について
割賦販売法2条1項1号・2号は,規制対象とするクレジット取引を「2ヶ月以上の期間,かつ3回以上の分割」又は「あらかじめ定められた方法により算定した金額」の支払い(リボルビング払い)に限定している。
しかし,全クレジット取引のうち上記割賦要件に該当しない取引が7割以上を占めており,かつ,高齢者に対する不必要な高額リフォーム・呉服販売などでは,3回払い未満の割賦形態をとるなど,割賦販売法の適用を潜脱するケースも見受けられる。
割賦販売法が,クレジット取引の公正を図ることを目的としている以上,支払回数によって規制を区別する合理的理由もない。
したがって,割賦要件を撤廃し,全てのクレジット取引を適用対象とすべきである。 
政令指定商品制の撤廃について 
割賦販売法は,政令で指定商品等を特定し,規制対象を限定している。
しかし,この指定商品以外の商品により被害が発生した場合,被害の発生後に指定商品に追加されても,規制が後追いになるだけで,被害救済が十分に図れないことになる。 
したがって,政令指定商品制を撤廃し,全ての商品を適用対象とすべきである。
適用対象制限の撤廃について
割賦販売法は,抗弁対抗規定の適用を除外している政令で定める金額に満たない支払総額の取引(法30条の4第4項1号),顧客にとって商行為となる取引(法30条の4第4項2号),販売業者等がその従業者に対して行う取引(法30条の6,8条5号)については,同法の適用を制限している。
しかし,被害者の属性によって救済の有無を分ける合理的理由はなく,例外をつくれば,悪質加盟店が例外を悪用して新たな悪質商法を作り出すから,例外を設けるべきではない。 
したがって,適用対象制限を撤廃し,割賦販売法の適用対象を広げるべきである。
2007/07/18